界面活性剤
ひとくちに「界面活性剤」と言っても、その種類は多数存在し、一部は乳化剤など食品添加物として認可され、使用されているものもあります。
ここでは特に洗剤や石鹸に関わる「界面活性剤」について触れていきます。
洗剤と石けん
洗剤や石けんの主成分は「界面活性剤」でできており、使われる界面活性剤の種類によって「石鹸」と「合成洗剤」に大別されます。
「石鹸」の界面活性剤は、動物性や植物性の油脂と塩を反応させて得られる「脂肪酸ナトリウム」と「脂肪酸カリウム」です。
「合成洗剤」の界面活性剤は、石油の他、動物性、植物性の油脂から化学的に合成したもので、一般的に「合成界面活性剤」と呼ばれています。
界面活性剤とは
界面活性剤とは洗剤や石けんの主成分であり、汚れを落とす主役=化学物質です。合成洗剤の界面活性剤の含有量は20~70%あります。
界面活性剤は、水と空気の境目や、水と固体の境目、水と油の境目のような界面に吸着するという性質があります。 吸着の結果、界面の性質がいろいろに変化して、以下のような仕組みで汚れを落とします。
1.表面張力を小さくし、衣類を濡れやすくする
表面張力とは、簡単にいえば、水滴が丸まろうとする力、つまり、界面の面積をできるだけ小さくしようとする力のことです。 この表面張力が小さくなると、水滴があまり丸まらずに広がるので、ものが濡れやすくなり、 洗うためには都合のよい状態になるのです。
2.汚れを衣類からはがす
汚れの表面に吸着して、汚れと水との間の表面張力を小さくするので、汚れがものからはがれて水の中に浮き上がろうとします。この現象をローリングアップといいます。
3.汚れが再付着しないようにする
汚れが衣類からはがれると、乳化、分散、可溶化という働きによって水中に安定的に浮かびます。汚れが落ちた衣類、汚れの表面はどちらも界面活性剤の分子に覆われ、再付着しにくくなります。
界面活性剤の主な分類
イオン性界面活性剤
水に溶かした時にイオン化する界面活性剤。イオンの種類によりさらに細かく分類される。
・アニオン界面活性剤【陰イオン系の界面活性剤】
(合成洗剤やシャンプーなどで使用されている)
・カチオン界面活性剤【陽イオン系の界面活性剤】
(衣類の柔軟剤、へアリンスや殺菌剤などで使用されている)
・両性界面活性剤【アミノ酸系やベタイン系などの界面活性剤】
(洗浄性や起泡性を向上させる補助剤として使用されている)
非イオン性界面活性剤
水に溶かした時にイオン化しない界面活性剤でノニオン界面活性剤とも言う。
最も代表的なものにポリオキエチレンアルキルエーテルがある。
上記の分類当てはまらないものもあり、界面活性剤の種類は数千あると言われています。
合成界面活性剤の色々な使われ方
合成界面活性剤は「洗剤」としてのイメージが強いですが、肌に触れる様々なものに使用されています。
例えば化粧品の分野だけでも「浸透剤」・「乳化剤」・「保湿剤」・「紫外線分散剤」など様々な用途として使われています。
この中でも意外と知られていないのが、「浸透剤」として使用されている点です。一般的な化粧品には、お肌にいいとされている様々な有効成分があります。
プラセンタ・ヒアルロン酸・セラミド・レチノール・ビタミンC・・・
この有効成分は、そのまま肌につけてもなかなか浸透しません。なぜなら、肌にはバリア機能があり、外からの成分を受け付けないようになっているからです。
この肌のバリア機能を一時的に壊し、有効成分を肌の奥に浸透させる役割として、一部の合成界面活性剤が使用されています。
人体への影響
界面活性剤は、その洗浄効果の高さから合成洗剤の主成分として長年用いられてきましたが、今日ではそのマイナス面(人体および環境に与えるマイナスの影響)が無視できないものになってきています。まず、衣類(繊維)への残留性という大きな問題があります。
これはあまり知られていないことなのですが、洗剤で洗うと、その後どんなにすすぎ回数を増やしても、界面活性剤の一部は衣類繊維にピッタリと張り付いたまま残ってしまいます。
だから、洗剤で洗った衣類を身につけたとき、この残留界面活性剤が私たちの汗や皮脂に溶け出して色々な悪さをするのです。
皮膚疾患と内臓障害
界面活性剤の特徴から、口から入るよりも、皮膚から入る方が身体の中に長く残留すると考えられます。皮膚を通して入った場合、血管に入り、体内を循環します。
しかも、異物、毒物を分解する肝臓でも分解できないため、長く循環し、一部は脂肪の多いところなどに滞留することになります。界面活性剤の毒性が、皮膚疾患及び皮膚を通しての長期浸透による内蔵疾患の一因と言われています。皮膚の被害は目に見えますが、より恐ろしいのは、目では見えず自覚しにくい体内部の被害です。
次世代への影響
界面活性剤は、その性質から胎盤を通過し、胎児や受精卵にも影響を与えるという研究もあります。また、精子の減少を引き起こす可能性も指摘されています。
環境への影響
合成界面活性剤の環境への影響はとりわけ水生生物や河川・海洋の生態系にとって深刻です。
濃度が濃い場合、魚はエラに障害を起こして死んでしまいます。また、微生物や魚類の卵などは深刻な被害を受け、河川・海洋の生態系を破壊する原因のひとつとなります。
分解されず残った合成界面活性剤は、水道水として再び私たちの元にかえってきます。そして、私たちの身体に取り込まれていくのです。
界面活性剤を有害化学物質に指定した「PRTR」制度
PRTR制度とは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、事業所からの環境(大気、水、土壌)への排出量及び廃棄物に含まれての事業所外 への移動量を、事業者が自ら把握し国に対して届け出るとともに、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計し、公表する制度です。
第一種指定化学物質
人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質として、計462物質が指定されています。そのうち、発がん性、生殖細胞変異原性及び生殖発生毒性が認められる「特定第一種指定化学物質」として15物質が指定されています。
この中には合成洗剤に使用されている界面活性剤も含まれています。